【トップノート】
清廉な気配をもたらすサイプレスの香りが広がります。紅南国の皇帝らしい風格ある佇まいが感じられる香りです。
とても涼やかな香りではあるのですが、同時に整った印象も感じられるため、自他ともに認めるほど美しい容姿をしている星宿もイメージできます。井宿の変装に「わたしはもっとキレイだ」と言って細かく修正指示を出している、少しナルシスト気質な一面が目に浮かぶようです。

【ミドルノート】
トップノートの端正な雰囲気に微（かす）かな甘さをもたらすように、クチナシの花が合わさります。
幼少期から勢力争いの波に揉まれていた彼の、ふいに訪れた静けさの中で感じた孤独が垣間見えてくるような、繊細な香り立ちです。
しかしその繊細さは、ジャスミンやバイオレットの凛とした花々が合わさることによって、次第に透き通る印象へと変化します。自分の思いは叶わなくとも、美朱に「愛してる」と真っ直ぐに伝えるような、清らかな心も感じられます。

【ラストノート】
オークモスの落ち着いた香りが漂い出します。自ら軍を率いて心宿と対峙し、倶東国の軍勢から自分の国、そして仲間を護り通した彼の、確かな覚悟が感じられる香りです。
トップノートからあった清冽（せいれつ）な雰囲気が和らぎ、美朱や仲間に会えて幸せだったと語る彼の、最期に見せた穏やかな表情が目に浮かびます。

【全体的な香りの印象】
ハーバル調の整った雰囲気の中に、儚くも気品のある花の甘みが重なる、気高い印象の香りです。
自身に課された責務を全うすると共に、一人の男として美朱を愛する彼の、一途な思いを感じてみてください。

© 渡瀬悠宇／小学館・ぴえろ 1995