トップノートはオレンジのフレッシュな香りや、ライムの勢いのある香りから始まります。前向きで威勢のいい信の様子が思い浮かぶ、若々しくすっきりとした香りです。漂と共に天下の大将軍になることを夢見ていた幼い頃の、明るい笑顔を思わせます。
一方で、ほんのり苦味も滲み出ており、漂を喪ったことで芽生えた、約束を果たすという一層強い決意も伝わってきます。

ミドルノートになると、ゼラニウムの渋みが出てきます。トップノートの若々しさとは違い、どこか未熟さを感じられます。数多の戦場に出て、秦国の優秀な将軍達や他国の強大な将軍達、そして戦場の残酷さを知った彼の心を思わせる、少し苦々しい香りです。
しかし、そこにグリーン調のすっきりとした香りが重なると、清々しく力強い印象が出てきます。未熟なりに現状に抗い、真っ向勝負を挑んでは泥臭く戦う信の姿が思い浮かぶ香りです。

ラストノートになると、ホワイトムスクの仄かな甘みが出てきます。信の持つ、仲間を見捨てず敵の誇りをも尊重する義理堅さや懐の深さ、そして民衆や敵将でさえも心惹かれる愚直さのような、温かみのある香りです。
そこにほんのりパチュリの芯のある香りが混ざると、飛信隊を率いる将軍にまで成長した彼の、頼りがいのある姿が思い浮かびます。また、道を示してくれた王騎将軍から、大将軍の魂や生き様を受け継いでいる様子も感じられる、優しくも漢気ある香りが漂います。

信のフレグランスは、シトラス調の酸味が気持ちを前向きにして、次第に出てくるグリーン調の力強さや温かみが、立ち向かう闘志をもたらしてくれます。
夢への道を着実に駆ける信の力を味方に、気持ちを新たにして、自分の目標ややるべきことに取り組む活力が湧いてくる香りです。

©原泰久／集英社・キングダム製作委員会