Jinshi

フレグランス名|作品タイトル

トップノートは、ベルガモットの軽やかな香りから始まります。キラリと光るその香りは、「麗しの貴人」と称される壬氏の姿が思い浮かびます。
そこに、ほんのり渋みのあるリーフグリーンの香りが重なると、軽やかさが落ち着いて淡々とした印象を感じられるようになります。猫猫に出会った当初、彼女を利用するために色目を使うという、自らの美しさを自覚している彼の抜け目のなさが表れているような香りです。

ミドルノートになると、ラベンダーのしっとりとした香りやサンダルウッドの静けさをたたえた香りが出てきて、透明感のある香りになります。都合のいい手駒のように思っていたはずの猫猫に対して、次第に好意を抱いていくイメージです。
自分も猫猫にかんざしを渡したはずなのに、自分を差し置いて別の武官に声をかけた彼女に拗ねてしまうような、隠し切れない感情が伝わってきます。

ラストノートはベンゾインの温かみのある香りが出てきて、付き人の高順ガオシュンや猫猫にだけ見せる、子供のような表情が思い浮かびます。後宮を取り仕切る宦官としての役目を忘れて、一人の青年としての姿を思わせる穏やかな香りです。
しかし、次第にムスクの不透明な香りが辺りを覆いつくします。未だ謎の多い“壬氏”が、後宮を監視する理由や、掴みどころのない彼の雰囲気を感じさせます。一人の青年のままではいられない運命を背負う壬氏のイメージです。

壬氏の香りは、フローラル調の落ち着いた甘みが優雅に香り、品のある印象を醸し出してくれます。
女性ばかりの豪華絢爛な後宮においても、ひときわ目立つ美しさを持ち、猫猫の知恵を借りながら多くの事件を解決していく壬氏の、隙のない立ち居振る舞いを思わせるフレグランスです。