Momoki

百樹|百と卍

トップノートは明るい柑橘調の香りに、乳香の甘い香りが合わさります。素直で愛嬌があり、誰にでも屈託なく笑いかけるお百のイメージです。卍に「やさしい奴」と言われたり、たとえわだかまりのある相手であろうとも無碍むげにはしない、そんなお人よしな性格が伝わるようです。
ここにユーカリの清涼感が重なると、浅草での江戸っ子暮らしに染まり始めた彼の、活きの良さが感じられます。生来の穏やかな気性に加えて、気風きっぷや勢いの良さが相まったような、すっきりと明るく、かわいらしい香りです。陰間から仕切り直し、浅草での卍との生活を心から楽しむ様子が浮かびます。

ミドルノートになると、無花果フィグのとろけるような甘みが出てきます。陰間あがりの色っぽさを残した、あどけなくもなまめかしいねやでの姿を思わせる香りです。トップノートの軽さが抜けた、まったりとした甘さが特徴的です。
次第にエレミのどこかスパイシーな香りも出てくると、陰間あがりという自分の出自に悩む様子も感じられます。これまで天真爛漫だったお百が見せる憤りや悔しさ、他人からの視線に対する苦悶が感じられるようです。どんなに変わろうとしても、過去を無かったことにはできない。そんな厳しさを思い出させる、甘くもほろ苦い香りです。

ラストノートは、シダーウッドのキレのある香りが漂います。月百姿つきひゃくしの名残でもあるなよやかさを克服して、百樹という一人前の男になろう、という強い決意が伝わるような、静かな香りです。また、過去のしがらみに囚われ目を背け続けてきた卍を引っ張るような、そんな惚れたが故の力強さも感じられます。
しかしそこに、卍と交わした血の契りのように、バニラのほんのりと甘い香りが寄り添っています。落ち着いた香りの中に、まるでお百の首から下げた匂い袋のような、まろやかな甘みが余韻を残します。一人前になってもかわいらしさは変わらないままでいい。そんなお百の良さを教えてくれるようです。

お百のフレグランスは、全体的にミルキーな甘みが印象的で、卍が惚れたやさしいお百のイメージです。
卍のフレグランスと合わせると甘みが引き立ち、卍と所帯を持つお百の“しあわせ”な姿が感じられます。