シトラスとベンゾインが生み出す素朴な香りは、伸ばした前髪の隙間から見える瞳の揺らめきのように、繊細で心許ない。辺りを漂うほの暗いラブダナムに手を差し伸べた刹那、どろりとした質感がその身を這い登り、じわり、じわりと意識を侵してゆく。
不安定に混じり合い、ゆっくりと堕ちゆく感覚の後ろで、密やかに息づく力強いベチバー。それは罪を背負い、己を捧げる少年の覚悟を、静かに物語っている。
もう二度と失いたくないと願いながら、共に在るために寄り添うフレグランス。

爽やかなシトラス調の香りが無垢な気配を生み出すものの、奥に控えるラブダナムはどこかほの暗さを帯びている。不慣れな感情が本能を揺さぶる度に、その陰りはより一層濃さを増し、じわり、じわりと不安定に広がってゆく。
しかし、後に残るオゾンの自然体な余韻は、その身体で感じた温もりを繋ぎ留めたいという、素直な一面をひっそりと覗かせる。
大切な居場所を守りたいと願いながら、共に在るために向き合うフレグランス。