淡々と香り立つユーカリがもたらす、曇天の静けさ。オゾンノートが生み出す霞の奥に隠れた微かな甘さは、厳しさの裏側にある情を思わせる。
雲の隙間から太陽が顔を覗かせるように、アンブレットシードが空気を晴らせば、傷ついた鳥たちは一斉に空へと飛翔する。
混迷する日陰をも照らす、クールで冴えたフレグランス。

すっきりとしたローズマリーが抱く、微かな渋み。それは決して表に出すことのない、過去への誓いを物語る。
それでも、明日へと目を向けるように香り立つのは、清々しいホワイトフローラル。温かなウッディアンバーが端正な空気を和らげれば、辺りに満ちるのは穏やかな気配。
若き背中をそっと支える、思慮深きフレグランス。

フレッシュなシトラスが、入り組んだ街並みを軽やかに駆け抜ける。追い風のように流れるのは、混じり気のないローズの香り。
清らかなホワイトシダーは迷いなく、真っ直ぐに香り立つ。それはまるで、飾ることを知らず真正面から向き合う潔い生き様のよう。
澄んだ瞳で希望を見出す、明るく若々しいフレグランス。

午睡のまどろみにも似た、ウーロン茶のまろやかな空気。不透明な香りの中に深く潜れば、そこに見えるのは鮮やかに咲くピオニーの花。
目覚めのぼやけた視界を晴らすようにクリアなシダーウッドが香り立つも、淡く繊細なムスクが再び夢の中へと誘う。
気怠げな態度で悪意を暴く、マイペースなフレグランス。

爽やかなグリーンティーの渋みとカラリとしたライムの酸味に、温かみある花々の甘み。それは花壇に落ちる陽だまりのように明るく、そよ風のように心地よい。
渡り鳥を迎える止まり木にも似たサンダルウッドの重厚な香りは、海風にも揺らぐことなく広がり続ける。
深い眠りからの帰りを待つ、朗らかなフレグランス。

品のある紅茶にまとわせた端正なベルガモット。その奥にあるローズマリーの硬さと、まったりとしたマテの甘さが、大人の味を醸し出す。
しかし、ゆるりと広がるムスクの穏やかな香りが、歩んできた道のりの険しさの果てに出会った安らかなる日々を物語る。
静かな眠りに寄り添う、涼やかさが心地よいフレグランス。

衆目を集めるために振りまく、オレンジの甘酸っぱさ。その親しみやすさに気を許した一瞬の隙に、ウィステリアの澄んだ甘さが重なり意識を翻弄する。
仕上げにシダーウッドの清々しさが加われば、見惚れてしまうほどのスマートな身のこなしに、追う者は心までをも奪われるだろう。
盗まれたモノを盗（と）り返すために、影の正義を貫くフレグランス。

堅牢な錠前に挑むコツは、ストロベリーの幼げなまでの甘さにも似た、楽しむ気持ち。そして、ミュゲがもたらす透明感のように、トラップを見抜く澄んだ瞳。
気づけばそこにある柔らかなムスクの繊細な気配は、培（つちか）った技を正しく使うための、純粋な優しさを思い出させるだろう。
気弱ながらも前向きに、好転の糸口を見つけるフレグランス。

罠を破るのに必要なのは、スパイスの静かな刺激がもたらす緊張感。そしてアニスの柔らかな甘みが生みだす、有事に備える心の余裕。
一息つくようにアンバーの温かみを重ねれば、退路を確保するその抜かりのなさで、共犯者たちが捕えられることは決してないだろう。
自分の信じる正しさを胸に、反逆の意思を見せるフレグランス。