イランイランの優雅な香りから始まります。雛子の花の香りとは違い、男性的な重みや渋みも帯びた香りです。

白い仕立てのいい羽織袴姿で、立ち居振る舞いも洗練されている、美しい青年といった印象の香りです。

ですが、あまりにも艶っぽく美しい香り立ちだからこそ、一般人とは格が違う良家の人物である以上に、どこか人間離れしていてミステリアスな彼の雰囲気も感じられます。

匂い立つ色香のような、白檀のスモーキーな甘みが出てきます。

彼に憑いた妖狐の側面が表に出てくるイメージです。

祝言を意のままに進めようと雛子に用いたという秘薬・秘法の、その甘い香りを思わせる、瞑想に入ってしまいそうなほど神秘的な香りです。

荘厳でいて酔ってしまいそうな香りからは、雛子の想いすらも黙らせてしまう、有無を言わさぬオーラが感じられます。

ベチバーやラブダナムといった、ウッディ調にも似たゆったり感と、バニラの素朴な甘みが重なります。

ミドルノートまでの、思わず警戒してしまいそうになるほどの品の良さや色香に比べると、穏やかで優しい印象に変化します。

「静寂の戎ヶ丘」で雛子が読む手紙に書かれていたような、穏やかで親しみやすい人柄の寿幸の一面を垣間見ることができます。

一方で、最後までもやがかったような質感は残ります。

彼の自我や雛子を想う恋心は、ただの執着だったのか、それとも純粋な想いだったのか、その答えがぼんやりと曖昧になっているイメージです。

狐面の男のフレグランスは、突然現れた美丈夫の、神秘的な雰囲気や色香、そして美しいが故の怪しげな雰囲気を感じられるのが特徴です。

一貫して品があり、格式高い印象をもった香りでありながら、まるで煙に巻くようなスモーキー感のある香りから、彼の心の在処に思いを馳せてみてください。

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